二冊目は、古典の名作を取り上げた「角川ソフィア文庫 ビギナーズクラシックス」というシリーズからの一冊。徒然草全243段のいくつかを現代語訳→原文→解説という流れで紹介している。
徒然草は学生時代に古典の授業で触れた程度、というのが平均的日本人のあり方だと思う。私もそのうちの一人。だけど、徒然草はちゃんと読むときっと面白いんだろうな、とは思っていた。きっと今までは思いもよらなかった物事の見方考え方がぎっしりと詰まっていて、生きていくうえでのヒントがたくさん得られるんではないかと思っていた。


で、読んだ。
現代語訳を読んで、気に入った内容だったらページの端を折って、原文に目を通すという流れで読み進めた。
読み終わって、ある程度の満足感に浸り、同時に一抹の物足りなさも覚えた。
その理由をちょっと考えてみて、現代語訳文で読み進めたのが原因なのかもしれないと気づいた。
難解で面倒くさくはあるけれど、やはり格調高い古文で読んだほうが、文章の示す内容は同一だとしても味わい深いし、だからこそ自分のものになりやすい。あるいは、難解でめんどうくさいからこそ、必要以上にその内容は高度であると錯覚してしまう。すいすいと読み通したいがために現代語訳ばかりを読んでしまったけど、本当は原文にじっくりと向き合ったほうがよかったのだ。そう思うと次に進んでしまうのが心残りではある。


作品と巻末の評伝を読んで、吉田兼好という人はひじょうにバランス感覚に優れていると思った。出家してこの世の無常と向き合いながら、自らの生活のために財テクを行い、良家の人々と交友を図る。俗世間とは超越した境地に身を置きながら、俗世間との交わりも怠らない。作品も人の世の移り変わりを嘆いたものから、自分の知っている面白エピソードまで、幅広い。「対立する二面をほどよく調和させて生きる現実主義者」であったようだ。


「偽りても賢を学ばむを賢といふべし」
「この一矢に定むべしと思へ」
「ただ今の一念、むなしく過ぐることを惜しむべし」


満足度★★☆


次に読む本を発見。

論語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)

論語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)